アクア用語集

【ワムシ】地球上のあらゆる水域に幅広く生息する動物プランクトンの一種

「ワムシ」とは、袋形動物門・輪毛虫綱に属する小型生物の総称です。体長は約30μm~2mm、淡水・海水・汽水問わず、地球上のあらゆる水域に広く分布しています。ワムシは現在までに2000種以上が確認されていますが、海水魚養殖等において主に利用されているのは、その中でも汽水域に生息している「シオミズツボワムシ」と呼ばれるワムシになります。なお、この「ワムシ(輪虫)」という名は、彼らが口部に持つ繊毛を用いて回転しながら遊泳する姿に由来していると言われています。
アクアリウムにおいては主に飼料の一種として扱われており、「ワムシ(輪虫)類」「輪形動物」「シオミズツボワムシ(主に利用されている種)」などと呼ばれることもあります。

ワムシは栄養面に優れているだけでなく、その嗜好性・利便性の高さなどから、魚類や無脊椎動物等の飼料に用いられてきました。また、「人工飼料に餌付いていない生体」「拒食を起こしている生体」「体(口)の小さな生体(稚魚など)」「プランクトン食の生体」等に対しても非常に有用的であるとされています。

多くの生物の優良な餌となっているワムシは、海水魚等の養殖における初期飼料としても重宝されています。なお、アクアリウムや養殖業において「ワムシ」と言う場合は一般的に、「シオミズツボワムシ」を指し示します。
シオミズツボワムシ(以下ワムシ)の体長は約100~300μmですが、これらは形態的な違いにより、さらにSS型・S型・L型と3つの種類に分けて扱われています。SS型及びS型は比較的暖水を好み、L型に比べ小型で繁殖力が高いという特徴を持ちます。一方のL型は比較的冷水を好み、S型やSS型に比べ大型で繁殖力が低いとされています。ワムシは雌雄異体ですが、安定した環境下においては雌しか存在せず、普段は単為生殖を行っています。しかし生活環境が悪化し危険を感じると雄を生じさせ、有性生殖を行います。この有性生殖が行われた結果、雌は長期間の乾燥に耐えることが可能な「耐久卵(休眠卵)」を産みます。

なお、孵化直後のワムシの体内には海水魚の正常な発育に必要だとされている高度不飽和脂肪酸(DHA・EPA)がほとんど含まれていません。これは、高度不飽和脂肪酸(DHA・EPA)を含有している植物プランクトンをワムシがまだ摂取できていないためです。必要に応じて、栄養強化剤や植物プランクトンなどを用いた栄養強化を施しましょう。